安心して受けられる医療とは? 誤診でも…


一般社団法人全国医師連盟代表理事 中島恒夫
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厚生労働省は、医療事故調査委員会についての議論を「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」として今年2月に再開させ、現在までに8回開催しています。しかし、これまでに発表された厚労省試案や上記検討部会での議論の内容では、懲罰制度の性格が強すぎるために関係者からの証言を得られにくく、原因究明・再発防止策としては全く機能せず、真の医療安全を図ることはできないと、私たちは考えています。
医療事故の原因を個人に帰するのではなく、「システムエラー」であることを私たちは強調し続けています。対象となる医療従事者個人の権利(黙秘権など)も守ると同時に、真相究明のための証言を得られやすくする制度設計をした「全国医師連盟試案」(http://zennirenn.com/opinion/2012/03/-201112.html)を既に発表しています。さらに、はからずも医療被害を受けた方々を救済補償する制度(基金)の創設も、私たちは同時に提唱しています。
院内事故調査委員会の設置を「落としどころ」にしようとの目論見も見え隠れしますが、院内事故調査委員会は冤罪を産む素地となりました。医療の安全性向上のためには、実地医療に即した医学的・科学的な検証が求められるはずです。
この点を議論するために、医療現場の最前線で働く医師の集まりである全国医師連盟として、「第1回 医療事故調シンポジウム ?真相究明と責任追及(懲罰、刑事罰)は両立するのか?」をこのたび開催します。
「医療事故調シンポジウム」
真相究明と責任追及(懲罰、刑事罰)は両立するのか
■日時: 2012年12月2日(日) 13:00から16:30(12:30から受付)
■会場:主婦会館プラザエフ(JR四谷駅麹町口前 徒歩1分)
■実施内容
1)開会挨拶:中島 恒夫(全国医師連盟代表理事)
2)基調講演:新田 清明(全国医師連盟副代表理事)
3)ゲスト講演(各15分)
4)パネルディスカッション
5)会場質疑応答
【シンポジスト】
佐藤 一樹先生(いつき会ハートクリニック 院長)
大磯義一郎先生(浜松医科大学医学部医療法学教授)
古川 俊治先生(医師、弁護士、自民党参議院議員)
有賀 徹 先生(昭和大学付属病院 病院長、日本救急医学会代表理事)
中澤 堅次先生(NPO法人医療制度研究会 理事長)
【ビデオメッセージ】
梅村 聡 先生(医師、民主党参議院議員)
【参加費】2,000円
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定刻より少し遅れて、70名以上は集約したシンポジウムとなりました。
医療介護CBニュース 12月3日(月)18時38分配信は次のように報じています。
医療事故の真相究明と責任追及は両立するのかをテーマにしたシンポジウムが2日、東京都内で開催され、国会議員や医師が参加し、医療従事者の権利を守ることや、医学的・科学的な検証を基にした制度設計などについて議論した。
シンポジウムは、全国医師連盟(全医連)が主催したもので、医療事故の刑事裁判で無罪判決を受けた医師や国会議員ら各パネリストが登壇し、それぞれの立場から主張を展開した。
警察への届け出を明記した医師法21条について、自民党の古川俊治参院議員は、同法改正私案を示し、医療関連死については医師法から外し、1回目の違反は行政処分として、医療法に規定すべきと提言。医療事故調査制度については、▽医療の透明性の確保▽施設内における事故調査の拡充・活用▽担当医師の説明責任の強化▽医療に対する刑事司法の無秩序な介入の抑制▽再発防止策の策定と公表▽医療界における自浄機能の育成―を挙げ、「まずは制度を創設し、変える所は変える必要がある」と指摘した。
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医療事故調査の制度設計と言うよりは医師法第21条と刑事訴訟法198条第2項業務上過失致死の解釈に焦点がありました。刑事事件になることを防ぎたい、恐れているのか、ありありと感じられました。
医療事故の調査等に係る仕組みに関する検討部会を傍聴をしていますが、特に刑事罰についての議論は7回までなかったです。ただ、何回かの検討部会の中での発言で医師を代表する先生方が刑事について過敏に反応されていました。それをお聞きするにつけ、逆にそんなに刑事事件に発展するような診療行為が行われていて、報告書によって暴露されることを恐れていると半信半疑になりました。もちろん犯罪性を帯びている事案については刑事も重要です。それよりもシステムエラーについて議論したほうがよっぽど有意義と感じていました。
で医事課長の医師法21条に対する発言の根拠がわかりました。
それは第7回を傍聴した佐藤一樹医師が構成員の有賀 徹 先生中澤 堅次先生のお二人と協力して、厚労省に文書で医師法21条の解釈について意見を求めたそうです。
佐藤一樹先生は不思議な立ち位置の先生です。患者側の協力医をなさったりしているにも関わらず、医師の信頼も厚く、刑事事件の3大被害者(割り箸事故、大野病院)とヒーローのようです。をお持ちです。確かにプレゼンはしっかり準備されているようですし、主張も一貫しています。そういったところが、医師、患者双方から信頼を受けるのでしょうか。あの、医療側として有名な井上清成弁護士も佐藤先生には一目置いているようでした。しかしこのお二人が法廷で対決となったらどうなるのでしょうか。ちょっと興味をひきました。
このシンポジウムで医師法21条の混乱は法医学会のガイドラインにあると。また、法医学会はこのガイドラインはトラウマになっていて触れたがらないといった発言がありました。確かに法医学会のHPに異状死ガイドラインがあります。 もちろん医師法21条だけをだけではなく、いろいろな面から検討されたガイドラインであるはずです。
【4】診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの
としています。でもこれが制定された背景を見ますと平成6年となっています。その当時としては医療事故調査機関の設立の議論があったかどうかわかりませんが、当時としては警察に通報しなければ、診療死の原因解明ができなかったのではないでしょうか。その後、法医の先生方のご尽力でモデル事業が行われています。つまり医療事故調査の機関設立の動きが医師法21条の解釈を再検討することが可能になったとも言えます。
日本法医学会は会員数約800名、実際に法医解剖をしていらっしゃる先生方は全国で約100名です。このシンポジウムを聞いていて、ここにいらっしゃる先生方が法医学を専攻なされば、医療過誤にあわなくてすむのに、しかも出世は早いし…。ななんて思ってしまいました。
フロアからの意見も活発でした。その中で気になったのは
「医療は不確実」「ヒューマンエラーは防げない」「ミスするのは当然」といった発言でした。
医師の中でも医師に対して、監督等、責任のある先生や、法学者、システムエラーの専門家、または患者側がそのように仰るのは賛同できます。
私もヒューマンエラーを刑事で裁くべきではないと思っています。でも、若い臨床の医師が当然のように仰ると、専門職としてのプライドはないのかしら?と疑問に思ってしまいます。
別に行われたシンポジウムでもドクターから、「患者は刑事事件になることを望んでいるのか?」といった質問がありました。医療者側と患者側が同じテーブルについて、この問題を、協議をしていけば、答えは見つかるのではないでしょうか。
第21条について、改正とか削除を考えていたシンポジストの方はいました。第8回検討部会の厚生労働省課長の見解が明らかになった時から、21条はそのままでよいという流れにかわりました。
この21条を額面とおりに解釈し、警察への届けをなくすのであれば、なおさら、しっかりした医療事故調査機関の設立が重要となります。
診療関連であっても、外表に異常を認めるご遺体については警察に通報するということは、そのままです。また、犯罪性が疑われる場合も通報です。でも、犯罪性があるか、悪質な故意によるものなのか、その場で判断することは遺族にはできません。遺族も申請できる第三者機関の存在はますます重要となってきています。そうなると、検討部会では院内事故調査や2段階方式が採用される流れでしたが、この21条に解釈を受けて振り出しに戻ったといえそうです。検討、仕切りなおす必然性がでてきました。厚生労働省に制度設計の議論を再度、要請しようと思います。
なぜ、警察への届出を懸念するのかと言いますと、でもわかるように、警察が介入すると「捜査中だから」ということで、被害者には何も情報が入らなくなります。一般の事故と違って、医療にはカルテ等の情報があります。医療事故調査機関であるならば、患者(遺族)と情報を共有して、医療者、調査機関、患者(遺族)との信頼関係を構築することが大切です。このシンポジウムで共感できる発言は、調査の仕方によって、医療者と患者(遺族)の信頼関係を損なうことがある。というものでした。それならなおさら、信頼関係を築く努力をシステムの中に組み込んでほしいと切望します。それは医療側にとっても大きなメリットとなるはずです。

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