ゆっくり走って治す高血圧

狩猟採集民の血圧は、収縮期(上)が110で、拡張期(下)が70。年とともに若干下がる傾向にあります。農耕民となると、総じて高めとなり、加齢で逆に上がり気味になります。そして、高度文明社会の都市住民は、上の血圧が、年齢に100を足した程度までに上昇します。高血圧は、明らかに「文明病」です。

高血圧を治すには、狩猟採集民の生活がヒントになります。
その前に、血液循環について正しい理解をしていただきたいです。
心臓が血液を全身くまなく巡らせると信じられていますが、心臓の本来の役割は、血液の逆流防止と、戻ってきた血液を一時貯留することです。
心臓は、ミニポンプに過ぎず、血液循環は、肺がメインポンプの役割を受け持っています。息を吸ったときに、肺の組織に圧力が掛かり、血液が心臓へ向けて押し出され、息を吐いたときは、その逆の流れを起こします。
サブポンプの役割が筋肉です。体を動かすと、一方の筋肉が収縮し、他方の筋肉が弛緩します。筋肉の収縮で圧力が掛かり、筋肉中の血液が静脈へ押し出され、弛緩で動脈から吸い込みます。
通常、この2つで血液循環は維持されています。
激しい運動となると、筋肉の動きが早く強くなり、サブポンプがフル稼働しますが、メインポンプの肺も助けに入って、呼吸が速くなります。ミニポンプの心臓も、心筋の収縮力をアップさせて血圧を上げ、また、心拍数を上げて協力しますが、極めて微力です。
時速20キロで2時間も走るマラソン選手は、肺と筋肉が強化されているのであって、心臓のポンプ能力が格段に高いわけではありません。

血圧が高いということは、肺と筋肉がサボっているから、心臓というミニポンプが懸命に努力している証しです。
財団法人労働科学研究所では様々な実験を行い、次のことが分かりました。

上の血圧を下げるには深呼吸が、下の血圧を上げるには膝屈伸が効果的

朝昼晩、ラジオ体操をやり、この2つは念入りに足し加えてください。
さらに、劇的な効果を上げられるのは「ゆっくりランニング」です。

1日20~30分、脈拍140/分の持久走

伴走者と話しながら走れる、やや呼吸が弾む程度の走り方です。
これを女性522人に3ヶ月続けていただいたら、ほとんどの方に理想血圧に向かう傾向が見られました。つまり、狩猟採集民の110、70への接近です。
さらに、これを毎日続けていけば、狩猟採集民と同じ血圧となることでしょう。

ここで、注意事項を申し上げます。
いきなりのランニングは危険です。走るという習慣を持たない方は早歩きから始めてください。心筋梗塞などを引き起こす恐れがありますし、足首の捻挫、膝痛を起こしかねませんからね。
なお、脈拍が150/分以上になる走り方は、効果が出ないとのことです。

(この記事は、当店「生涯現役新聞」2004年10月号を再掲したものです。)

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