Transplantation: 臓器移植

2013年が始まりました。今年もたくさんの患者さん・家族との出会いが待っていると思います。肝移植が必要と云われる患者さんは年間2000名程度と報告されています。このうち日本の年間肝移植数400程度ですので、20%程度の患者さんに肝移植が行われているにすぎません。また肝移植医療の遅れている東日本では、臓器移植で助かる患者さんの多くが、移植医療という選択肢を提示されることもなく亡くなっている現状があります。打開するのは個人の力では無理ですが、少しでも西高東低の移植医療を質の高い平均的な医療にしてゆかなければなりません。
また生体肝移植は実施施設数が減少し、症例数も減少しているため、伝統芸能的になってきています。心臓外科・消化器外科と同様に執刀数が多ければ、外科医の技術は高まるわけですが、執刀数の母集団が少なければそれだけ経験できる手術症例が少なくなるわけです。20年前は卓越した技術を持つ執刀医しか肝移植の手術を執刀できませんでした。現在も本質はそれでいいと思うのですが、後進の育成を考えるとそうもいきません。今の若者は外科学という人生勉強を、手術経験があれば達成可能とはき違えている感があるからです。先代の恩師は一度も後輩に執刀させないまま退官されました。「私の手術をよく見なさい」ということだと思います。若い世代に手術を執刀させることで得られる自信と慢心は、表裏一体で非常に危ういものです。どのように指導してゆけばいいのか悩みは尽きません。
症例数が多い施設はさらに困難な症例の肝移植に挑戦しないとなりません。年間症例数が少ない施設は絶対安全な手術以外手がけるべきではないのです。移植手術は手術も大切ですが、周術期管理がもっと大切です。患者さんは移植手術を受ける前に「去年は何例移植を行いましたか」と聞くべきでしょう。症例数が20を切る施設で移植を受ける場合、患者さんは比較的安定した状態であるべきだと思います。さらに○○センターのように一見癌・循環器だけに専従してような名前の病院にも注意が必要です。手術前に心臓病・糖尿病・肺機能などに問題がある場合の対応ができないからです。手術は一人の天才外科医が行うものではないのです。病院の総合力、患者さん協力があって成り立つものです。
さて、今年も自分を戒め、まだ見ぬ患者さんのために精進してゆこうと思います。

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