針治療は高血圧に効果なし!

針治療が血圧を下げることに効果があるということは中国を中心として報告されています。それらの報告では、血圧測定者が被験者が針治療を行われる群とそうでない群のどちらに振り分けられているか知っている方法で行われており、信頼性に欠けるものでした。針治療が血圧を下げることに効果があると信じている血圧測定者は何度か血圧を測定して低い数値を結果として採用するからです。
しかし、これは研究方法の限界とも考えられます。どちらの群に振り分けられたかは被験者に尋ねれば解ってしまうからです。
そんな結果に決着をつけるべく、二重盲検無作為ランダマイズ試験が行われました。
Stop hypertension with the acupuncture research program. Results of a rondomized, controlled trial.
Hypertension. 2006;48:838.
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★☆☆)
血圧が140/90mmHgから179/109mmHgの192人が、高血圧に有効とされているツボに針治療を行う群、個人の東洋医学的な状態から個別に処方されたツボに針治療を行う群、それらと全く関係のないツボに針治療を行う群に分けられました。
つまり研究対象者全員になんらかの針穿刺を行うことで、血圧測定者に被験者がどの群に振り分けられたかが解らないようにしたのです。もちろん被験者自身も自分がどの群に振り分けられたのか知らされていません。
針治療は、12年以上針治療の研修をうけた専門家によって週2回、6~8週間行われ、血圧は開始から10週間後、4、6、9、12か月後に測定されました。
10週間後には、高血圧に有効とされているツボに針治療を行う群で収縮期血圧が3.6mmHg、個人の東洋医学的な状態から個別に処方されたツボに針治療を行う群で3.6mmHg、それらと全く関係のないツボに針治療を行う群で3.8mmHg低下し、3群間で差がありませんでした。同様に拡張期血圧も差がありませんでした。
針治療が終了した4、6、9、12か月後には血圧は治療前の値に戻っていました。針治療には高血圧の薬を内服すること以上の対費用効果は認められませんでした。高血圧の薬を内服すれば血圧は10mmHg以上下がります。また、治療直前と治療直後にも血圧の差は認められませんでした。
針治療をうけていると、たとえそれが適当(いいかげんなツボ)にされている群でも血圧がわずかに低下していることから、精神的な暗示効果は認められましたが、このように針治療には高血圧症を治療する効果が全く認められないことが初めて二重盲検無作為ランダマイズ試験で証明されたのです。
この研究はアメリカでおこなわれました。中国のお家芸である針治療はおそらく、中国>日本>アメリカ、の順に多く行われていると思います。症例数が多い中国でこれまで大規模に証明されなかったのは、針治療に効果がないことを知っていたためにこういう研究をする事を意図的に止めていたと考えるのが自然です。
この研究は小手調べといったところでしょう。血圧という数値化された結果を扱うから証明しやすいのです。そのうちアメリカは頭痛とかのぼせに対する漠然とした効果も数値化して効果のなさを証明するでしょう。現にこの論文でも精神的スコアーは針治療で改善したが、身体的スコアーは改善しなかったことを証明しています。
要は、針治療は精神的安心感だけに効果ありといったところでしょうか。個人がそれで満足ならそれはそれでいいのでしょうが・・・

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